第4次産業革命の主役と言われているブロックチェーン技術が金融の全分野に影響を与えているなか、保険業界もブロックチェーンに注目し始めている。
保険開発院は、最近「インシュアテック(InsurTech)と保険産業のイノベーション」のセミナーで、人工知能(AI)とブロックチェーンが保険産業の未来を変えるだろうと述べた。
※保険開発院とは?
保険料率の算出、統計、自動車保険の車種別等級、損害保険の研究・調査の専門機関。
同院は、企業用ブロックチェーンのグローバル市場の規模が、2016年の25億ドルから2025年には199億ドルまで成長すると予想しており、この市場を攻略することが保険業界の未来を拓くと見ている。
ブロックチェーンの導入を通じて、すべての保険加入者のデータが収集され、管理が簡単になることで、保険金請求のプロセスにイノベーションをもたらすことが期待されている。
保険会社の危機管理と手続きなどにかかる時間の短縮で効率が上がり、コストが削減されるため、保険料の割引が可能になる。病院との連携を通じたヘルスケア産業の発展につながるという点も魅力的な要素だ。
しかし、期待が増している一方で、韓国内の保険業界の成長は遅れている。
そんななか、教保生命は韓国の保険とブロックチェーンの融合を先導して、関連事業の主導権を握っている。
◇教保生命、実損補償金の自動請求システムなどブロックチェーン導入をリード
教保生命は、ブロックチェーン技術を活用した保険金の自動請求サービスの試験運営や、業界初の「スマート家族保障分析システム」の導入などで関連事業をリードしている。
ブロックチェーンベースの実損保険金の自動請求サービスは、100万ウォン(約10万円)未満の少額の保険金を顧客が請求しなくても保険会社が自動で支払ってくれるサービスだ。
これまでの実損保険は少額の請求が大半を占めるにも関わらず、手続きが複雑で多くの顧客が少額の保険金の受領を諦めてしまうケースが多かった。ある団体の調査によると、保険加入者の10人中7人は治療を受けても保険金を請求しておらず、未受領者のうち19.8%は「請求手続きが面倒で諦めた」と回答したという。
昨年、韓国政府が進めた「ソウルインターネット(IoT)活性化基盤構成ブロックチェーンモデル事業」の事業者として選定された教保生命は、金融当局と共に実損保険金の自動請求システムの開発に力を注いでいる。
教保生命は、昨年末から複数の病院の職員を対象に実損保険金の自動請求システムの試験運営を行い、よい評価を受けた。これをもっと高度化させて近いうちに全国20か国の病院、教保生命の全体顧客を対象にサービスの提供に乗り出す予定だ。
このシステムが全面的に導入されれば、顧客は複雑な手続きなしに保険金を受け取れるようになる。
教保生命は、郵政事業本部と協力して郵便局にもブロックチェーン技術が導入された保険金請求を拡散させて、生命保険協会と共に他の生命保険会社らにも関連システムが導入されるように支援をしている。
これだけに留まらず、教保生命はブロックチェーンの専門企業「theloop」とのMOUを通じてブロックチェーンベースの次世代の保険プラットフォームの構築まで準備している。
「スマート家族保障分析システム」は、他の保険会社の契約情報を安全に取り入れる仕組みで、ブロックチェーンとスクレイピングなどを活用した技術だ。
※スクレイピング(Web scraping)とは?
ウェブサイトから情報を抽出するコンピュータソフトウェア技術。
アプリケーションや公認認証書なしに、kakaopayの認証で指紋やPINなどの簡易認証を登録できるようにした。
※公認認証書とは?
電子商取引をする際、当事者が身分を説明するために使用する一種の電子署名で公認機関が発行する認証書。
モバイルホームページのkakaopay認証での保険契約貸出申請も保険業界で初めて可能になった。教保生命の関係者は「保険のコンサルティングは便利になり、保険の重複加入や過剰保障も防止できる」と説明した。
◇ブロックチェーン導入に動き始めた生保業界、躊躇する損保業界
このように教保生命を筆頭に生命保険業界がブロックチェーンに注目している一方で、損保業界は足踏みしている状態だ。
生保に比べて、取り扱う商品が多様で一律的な導入が難しいということが大きな原因だ。
生命保険協会は、今年の5月SAMSUNG SDSを事業者として選定し、生命保険業界のブロックチェーンプラットフォームの構築及びブロックチェーンベースの課題解決に関する事業を進めている。これを通じて本人認証・保険金請求などにブロックチェーンプラットフォームを構築・適用する予定だ。
損保業界は、ブロックチェーン企業とのMOUを通じてそれぞれ事業に乗り出している。代表的にMG損害保険はブロックチェーン専門企業である「Cube Intelligence」と提携して自動車のビックデータを活用したブロックチェーンベースの保険ビジネスモデルを共同開発している。
AXA損害保険は、インシュアテックのスタートアップ企業「ZIKTO」との提携を通じてそれぞれのブロックチェーンを活用した保険商品を開発している。
これに関して、損害業界の関係者は「保険会社がブロックチェーンに関心を示しても、開発会社ができる範囲は限られてしまう。協会が先頭に立って交渉をしなければブロックチェーン融合事業が加速することは難しい。」と指摘した。
◇ GAもブロックチェーン技術に注目
販売に特化してきた保険代理店(GA)もやはりサービスの高度化及び利便性の向上のためにブロックチェーン技術を積極的に導入している。
インシュアテック独立販売法人「Rich&Co.」は、最近Quarkchain Foundationと提携し、Quarkchainベースのブロックチェーンの保険サービスの開発のための業務協約(MOU)を締結した。
Quarkchain Foundationはシンガポールに本社を置き、中国、アメリカ、韓国に事業を拡張しているブロックチェーン企業だ。
Qi Zhou代表を含めた開発者全員がGoogle、Facebook、UBERの出身だ。彼らが構築したブロックチェーンプラットフォームQuarkchainは、次期イーサリアムを指向するプラットフォームの中で公開デモを通じた検証の結果、処理速度が最も速かったブロックチェーン技術だ。
Rich&Co.の関係者は「Quarkchainの技術をベースに韓国内の保険会社を連結するブロックチェーンインシュアテックサービスを開発して、グローバル市場に進出する予定だ。」と明らかにした。
また「GoodRich Coin(仮)」のICOも積極的に検討して、今後GoodRich Coinで金融及びヘルスケアサービスを利用できるようにする予定だ。
Rich&Co.のマーケティング部門のナム・サンウ常務は「Rich&Co.とQuarkchainの技術協約で保険分野でも第4次産業時代にふさわしい顧客サービスを開発できることを期待している。Quarkchainとの技術協約を通じて保険が最も顧客指向のサービス産業に成長できるように両社が共に努力していく」とコメントした。
インシュアテックのスタートアップ企業「ZIKTO」は、ブロックチェーンをベースにして保険会社、顧客、アプリ開発者(連結メディア)を繋げる保険関連仮想通貨INSUREUM(ISR)を開発中だ。
INSUREUMは、保険プラットフォーム「INSUREUM PROTPCOL」で活用されるイーサリアムベースのユーティリティトークンだ。
「INSUREUM PROTOCOL」は保険会社とデータ企業(開発者)、保険消費者の3者が顧客の健康関連データを自由に流通して活用し、補償と収益が自動処理されるブロックチェーンベースの分散型システムを指す。
「ZIKTO」側は、プラットフォームが構築されれば、保険商品開発から販売、アンダーライティング、危機管理、保険金支給まで保険の全過程がデジタル化・自動化されることを期待している。
彼らはプロジェクト成功のためにブロックチェーンと金融の専門家らで構成された顧問グループを運営している。諮問団は、BitGoのウィル・オブライアンCEO、Blockchain Labのイスマイル・マリックCEOを始めとする世界的な専門家らで構成されている。
また、「ZIKTO」は世界最大の企業型ブロックチェーンネットワーク「イーサリアム企業連合(EEA)」にも加入した。
特に最近は大手のグローバル取引所であるCoinBenでの上場に成功し、勢いを増している。「ZIKTO」のキム・ギョンテ共同代表は「今後もより多くの人にINSUREUMを知ってもらえるように韓国内外の主要仮想通貨取引所での上場を進める・」をコメントした。
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引用記事:http://www.fntimes.com/html/view.php?ud=201809091027334490dd55077bc2_18
(「保険+ブロックチェーン、動き始めた生保業界」『韓国金融』2018年9月10日の記事)
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翻訳:花崎
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